横根山から-足尾もう一つの閉山-
商品コード: 978-4-874300-61-9
佐野聖光写真集
2020年8月7日 発行
体裁 横250mm 縦248mm/並製本/モノクロ100頁
■著者「あとがき」より
振り返ると、足尾にきてあと少しで半世紀となりますが、最初の十年間は職も持たず、ただ自分の写したい写真を撮ることだけ、将来の事など考えたこともなく、結婚はしたものの生活より写真に振り回されながらも充実した日々だったと思います。
今回の『足尾もう一つの閉山 横根山から』は、昭和23年に入植した開拓団によって開墾された横根山高原の写真で、そこで生活をしていた人達は開発計画により農地を手放し山を降りていきました。これが足尾銅山の閉山と同じ年、昭和48(1973)年です。私には、足尾に来た当初の想い出多き場所であり人達なので、足尾の記録として残したい想いから、これを私の写真の原点とも言える恵雅堂出版から写真集にして出してもらうことにしました。
『閉山日記』『渡良瀬川』『故里のやまは』『ポコと私』『川田園長と仲間たち』そして今回と、六つの表題はすべて、足尾に来て足尾の人達との出会いの中から生まれたものです。私が足尾の一時期に立ち会えたことの事実と、その記録を残せる喜びは何ごとにも代えがたく、私の家族、関わってくださった方々、また、今は亡き人達との想い出の多い足尾に心から感謝します。ありがとうございました。 佐野聖光
■編集者から一言
日本の近代化の光と影を映すように栄えた足尾鉱山が、その役目を終え閉山となったのは1973(昭和48)年2月。翌年3月、児童数2名までに減った足尾小学校横根山分校がひっそりと閉校した。この分校のあった土地(標高1300m)は、1948(昭和23)年に満州からの引揚者60戸が入植して開拓した農地。苦労が続き一時は四分の一まで戸数を減らしながら、ようやく酪農・高冷地野菜作りの農業経営が軌道に乗った矢先、足尾銅山閉鎖で浮上した観光開発計画によって開拓農民たちは山を下りることになった。農地は再び高原の自然に還る。
撮影は、今も足尾に住む写真家佐野聖光。この頃東京から風来坊のようにして足尾に降り立った佐野は、横根高原ロッジでアルバイトとして働く身だった。
写真には一切タイトルもキャプションもないが、この開拓農地の閉村への物語が、農民たちの、そして子供たちの笑顔や泣き顔をとおして甦る。
本写真集は、佐野がこの横根山開拓農民たちの一瞬の光芒を捉えた、惜別の記録である。