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パステルナーク事件と戦後日本「ドクトル・ジバコ」の受難と栄光

¥3,300 税込
商品コード: 978-4-87430-058-9
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著者 陶山 幾朗〔著〕
2019年11月20日 発行
体裁 四六判 上製本 432頁
■紹介
かつて日本の文壇を揺るがした「パステルナーク事件」という騒動があった。それは、1958年度ノーベル文学賞がソ連の作家パステルナークに授与されたとの一報から始まった。
それから60年。日本の文学者・知識人たちが無自覚のうちに巻き込まれた、この忘れられた”協奏曲”の真実に、初めて本書が迫る。
革命ロシアの神話や、「新しい人間」の誕生や、歴史的必然の理念が、なお、力をもっていた1950年代。ボリス・パステルナークは、ロシア文学のすぐれた伝統を受け継いだ小説『ドクトル・ジバゴ』を書いた。そして、それがソ連作家による初めてのノーベル賞を受賞するという栄光によって、逆に共産党政府による迫害と孤立に追い込まれる。この書の著者、陶山幾朗は、その後もロシアとともに生きたパステルナークに寄り添い、これらの経緯を、溢れる怒りを抑えた、冷静で情熱的な文体によって追跡している。
そればかりではない。戦後日本の文壇文学が、このパステルナーク事件に対してとった、あいまいな態度を、個々の作家たちの思想にまで踏み込み検証している。陶山はこれを書いた後、突然、病死したが、わたしたちは、この最期の書に接し、パステルナーク事件を忘却に任せてきた、現在の思想・文学の病巣の深さに愕然とするだろう。 
北川 透(詩人・文芸評論家)

■版元から一言(刊行までの経緯)
陶山さんは、弊社で編集をお願いした『見るべきほどのことは見つ』(内村剛介著/2002年)の頃から、影法師のように少しずつ私の意識の中に入ってきました。その影は、内村氏の健康の衰えに比例して大きくなり、ついには本人をして「内村剛介のことは自分よりこの人に訊け」と言わしめるほどの存在となり、それが内村剛介著作集全七巻となって結実しました。編集者・陶山幾朗の渾身の仕事でした。
さて、『パステルナーク事件と戦後日本』です。本書は、誰もが事件を忘れてしまった60年後の今、突然炸裂した時限爆弾のような論考です。この一冊により、氏の名は稀有の思索家として記憶に残るでしょう。著者の本書への思いは隅々まで行き届いていて、判型から書体、文字組みまで、すべて著者の指示によります。ただ一点、表紙の問題だけが残っていました。そのことで、私は「一人暮らしで身軽」という氏の言葉に甘え、昨年11月6日に上京いただくようお願いしました。ところが氏は約束の場所についに現われませんでした。翌日思い切ってご自宅に連絡をしたところ、やはり胸騒ぎがして実家を訪ねたご子息から、2日に氏が逝去されていたことを知りました。思索家・陶山幾朗の更なる活躍を確信していた私は残念でなりませんが、案外、ご本人はにこにこと我々を見下ろしているような気もします。そういう方でした。
最後に、本書刊行に多大なるご協力をいただいたお2人のご子息・陶山礼様と荒木秀人様、帯文を書いて下さった北川透先生、様々なご配慮をいただいた成田昭男様に、深甚の感謝を申し上げます。
2019年11月2日 恵雅堂出版 麻田 恭一

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