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共産主義黒書 ―犯罪・テロル・抑圧― 〈コミンテルン・アジア篇〉

¥3,300 税込
商品コード: 978-4-87430-027-5
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著者 ステファヌ・クルトワ ジャン=ルイ・パネ ジャン=ルイ・マルゴラン〔著〕/高橋武智〔訳〕 体裁 A5判 上製本 414頁 発行 2006年7月25日

 

—ロシア革命の世界革命化を狙ったコミンテルンと、中国6500万人、ベトナム100万、北朝鮮200万、カンボジア200万人など人類未曾有の犠牲者を生み出したアジア共産主義の現実。

 

戦争と革命の世紀であった二十世紀、共産主義による犠牲者は全世界で約一億人を数え、ナチズムの犠牲者2500万人を上まわる。なぜナチズムが断罪され、共産主義はされないのか? 民族・人種によるジェノサイドと階級・思想によるジェノサイドはどこが違うのか。ついに開けられたパンドラの箱。

 

■本書(コミンテルン・アジア篇)は原著の「第2部 世界革命・内戦・テロル」、「第4部 アジアの共産主義」中国(チベット含む)、北朝鮮、ベトナム、ラオス、カンボジアを、そして「結論」に相当する「なぜだったのか?」を翻訳。暴力・抑圧・テロルを軸に豊富な資料により、農民・知識人・共産党員・軍人などが、いつ・どこで・何人犠牲になったかを丹念克明に記録した驚愕の書。

 

■原著は1997年、フランス、ヨーロッパで大論争を巻き起こしたベストセラー。フランスで30万部、全世界34カ国に翻訳され100万部に達する、一般・学生・研究者必読の書。『共産主義黒書(ソ連篇)』との併読をお勧めいたします。

 

 

《書評より》

 

「毎日新聞」—今週の本棚—(2006年8月13日)■鹿島茂

 

抹殺を無限増殖させる「正義」の独善、気が重くなると同時に気が遠くなるような本である。旧ソ連二〇〇〇万人、中国六五〇〇万人、ベトナム一〇〇万人、北朝鮮二〇〇万人、カンボジア二〇〇万人、東欧一〇〇万人、ラテンアメリカ一五万人、アフリカ一七〇万人、アフガニスタン一五〇万人(合計、ほぼ一億!)。この数字が何を意味するかといえば、それぞれの国が共産主義体制になったために無残にも殺された人の数である。

 

一九九七年にフランスで出版されて以来、世界中で百万部に達するベストセラーになった『共産主義黒書』の『ソ連篇』に継ぐ『コミンテルン・アジア篇』は、コミンテルンの国際共産主義運動、及び、中国・北朝鮮・ベトナム・カンボジアなどのアジア型共産主義によって、いかに多くの人々が殺され、強制収容所に閉じ込められ、迫害されていったかを、入手可能な資料から淡々と描いているが、そこから浮かび上がってくるのは、ナチズムのような「悪」の顔をした「悪」ではなく、共産主義のような「善」の顔をした「悪」には、なぜ限度というものがないのかという疑問である。

共産主義には抹殺すべき「敵」を無限増殖させるシステムが内包されていた。これが重要である。「すでに福音書が次のように断定していた。『私とともにいない者は私にそむく者である』と。新奇なのは、レーニンが『私とともにいない者は私にそむく者である』としただけでなく、『私にそむく者は死ぬべきである』と布告し、またこの提案を政治の領域から全社会の場へと一般化したことである」。

 

「私にそむく者」というのは「私に近い者」である。つまり、遠い者からではなく、近い者から先に殺していくという「粛清」の原則があるのだ。それが如実に現れたのは、スペイン内乱である。

当初、スペイン情勢に無関心だったスターリンは、介入が有益だと判断するや、秘密裏に大量の工作員を派遣し、共和派内部の敵対勢力の一掃を命ずる。「『左翼』反対派−−社会主義者、アナルコ・サンジカリスト、マルクス主義統一労働者党員、トロツキスト−−を抹殺することは、フランコの軍事的敗北に勝るとも劣らず重要だったのだ」。では、こうした「敵」を処理したあとには、どういうことが起きるのか?「スターリンが改革を加えたもう一つの点は、死刑執行人が次には犠牲者となる運命にあるということだ」。

 

スペインの左翼反対派を抹殺した共産主義者の多くは、フランコ勝利後、ソ連に亡命したが、彼らのほとんどは「トロツキスト」として処刑された。このプロセスは、戦中に東欧やドイツなどで正確に繰り返された。「合計して、ソ連に亡命したドイツ人反ファシストの三分の二は弾圧の手に落ちたのである」。ナチの迫害を逃れてソ連に亡命したユダヤ人の中にはゲシュタポに引き渡された者もいた。ドイツ軍の捕虜となったロシア兵のほとんどは帰国後に処刑されるか強制収容所に送られた。いっぽう、中国では、共産党員が粛清で犠牲となることはソ連に比べれば少なかったが、その代わり、もっとひどいことが起きた。毛沢東が権力維持のために展開した「大躍進」運動で大量の餓死者が出たのだ。「一九五九年から一九六一年にかけ、不当にも『大躍進』と呼ばれる時期に、二〇〇〇万から四三〇〇万人にのぼる『過剰な死者』が出た。この数字は、毛沢東という一人の男の常軌を逸した企図からのみ生じた飢饉(ききん)」であった。飢饉による死亡率は村によっては五〇%を超えた。農民の中には、他の家族と子供を交換しあって、これを食用に供した者も現れた。毛沢東は「大躍進」の失敗で劉少奇によって権力から遠ざけられたが、やがて劉少奇ら「実権派」の追い落としを図り、紅衛兵を使ってプロレタリア文化大革命を用意した。この文化大革命で、また四〇万人から一〇〇万人の人たちが命を落とした。しかし、こうした毛沢東のやり方を手ぬるいと見た独裁者もいた。カンボジアのポル・ポトである。彼はブルジョワ的悪徳で汚染された都市住民や知識人は矯正不可能と判断し、これを全員消滅させてしまう道を選んだ。「われわれが建設中の国のためには、よい革命家が一〇〇万人いれば足りる。その他の住民は必要ないのだ」。クメール・ルージュのこの言葉は確実に実行に移された。

 

正義と道徳と科学性は自分の側にあり、向こう側にある者はすべて虫ケラであり、踏み潰(つぶ)す権利があると信じる独善こそが共産主義者の本質である。「何よりもまず敵であり、ついで犯罪者でもある敵対者は被排除者へと変貌をみた。この排除からはほとんど機械的に絶滅という観念に行き着く」。ナチズムがかくまで非難されているのに、共産主義はなにゆえに今日まで断罪されずにいるのだろうかという著者たちの疑問は、もう一度真剣に検討する必要がある。

 

 

■著者略歴

ステファヌ・クルトワ(Stephane Courtois)

フランスCNRS(国立科学研究センター)主任研究員、『共産主義』誌編集長。

共産主義の歴史の専門家。著書に『戦時中のフランス共産党』『だれが何を知っていたか? ユダヤ人の絶滅』『異邦人の血 レジスタンスの中の自我の移住』『フランスが熱中した五十年 ド=ゴールと共産主義者』『厳しさと情熱 アニー・クリージェルに捧ぐ』『1945年の世界』『フランス共産党史』『エウゲン・フリード フランス共産党の大きな秘密』など。

 

 

ジャン=ルイ・パネ(Jean-Louis Panne)

仏歴史学者。

『フランス労働運動伝記辞典(1914-1939)』に寄稿。著書に『ソリダルノスチ の社会的企図と自主管理への賭』『共産主義の呪縛を最初に解いた男、ボリス・スーヴァリヌ』など。

 

 

ジャン=ルイ・マルゴラン(Jean-Louis Margolin)

仏・プロヴァンス大学講師、同大東南アジア研究所(CNRS)研究員。歴史学一級教員資格者。

著書に『シンガポール 1959-1987年 新工業国の成立』など。

 

ピエール・リグロ(Pierre Rigoulot)

社会史研究所研究員、雑誌『社会史ノート』編集長。

著書に『収容所群島に入れられたフランス人たち』『(わが意に反して)の悲劇』『見るべきものを見ずに、収容所群島に直面したフランス人 混迷と憤激』など。なお、北朝鮮に関する次の著述が邦訳されている 及川美枝訳『北朝鮮の真実—フランスからみたその誕生と行方』(角川書店、2004年)

 

■訳者略歴

高橋武智 1935年、東京生まれ。

東京大学大学院で18世紀フランス思想・文学を専攻。立教大学助教授を経て、現在翻訳家。スロベニア・リュブリャナ大学文学部客員教授。

主な訳書に、A・ゴルツ『エコロジスト宣言』(緑風出版)、H・カレール=ダンコース『崩壊したソ連帝国』(藤原書店)、C・ランズマン『SHOAH』(作品社)など多数。編著に『群論・ゆきゆきて神軍』(倒語社)ほか。

 

 

 

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