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不滅の敗者ミリュコフ ロシア革命神話を砕く

¥2,200 税込
商品コード: 978-4-87430-032-9
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著者 鈴木 肇〔著〕 体裁 A5判 上製本 195頁 発行 2006年12月20日

 

—現ロシアの歴史学は、レーニン主義の呪縛から脱しつつあるようだが、日本の歴史学ははたしてどうなのだろうか? 本書によって、長らく封印されていた多くの新事実を知り、ロシア史の真実への認識を深めてくださることを期待したい。(著者)

 

 

《推薦の言葉》

 

■石井英夫氏(産経新聞論説委員)

学者? 新聞編集長? 歴史家? 政治家? はたまた「人民の敵」の趣味人? ロシアの「生ける近現代史」といわれたミリュコフは、一体何者だったのか。かつて新聞のモスクワ特派員だった『人物ロシア革命史』の著者が、ミリュコフの全体像に迫ってロシア史を見直しする。

 

 

■小林和男氏(作新学院大学教授)

歴史は個性的な人物の登場で息づく。『人物ロシア革命史』の著者が、また一人の陰の立役者を見つけ 出した。類い稀な学識と観察眼を持ち、早くからレーニンを「現実的ではない自説を繰り返す男」と看破

していたインテリが、革命という壮大な実験の中でどう行動し破れたか。革命史に命を吹き込む発掘の書だ。

 

 

■木村汎氏(拓殖大学海外事情研究所教授)

ミリュコフ。私個人もその伝記を是非とも書きたいと念じていたロシアで唯一の政治家である。鈴木氏は、 この大政治家の多彩な才能と人間的な魅力を十二分に描き切った。世界で初めての試みに見事に成功したの である。本書刊行のあと、ミリュコフ伝を書こうとする野望を抱くものはいなくなった。

 

 

 

 

《書評より》

 

今を照らす文人政治家の生涯■木村汎(拓殖大学海外事情研究所教授)

リトビネンコの暗殺とほぼ時を同じくして、ガイダル元ロシア第1副首相がアイルランドで毒を盛られる事件が発生した。その折、ロシア特殊機関のかかわりを否定しようとして、ロシアの一部メディアが漏らした言葉は興味深い。今日ロシア政治に対して何らの影響力を持たないガイダル氏を、わざわざ殺害するメリットは一体どこにあるのか。確かにこの発言のなかには、一抹の真理が潜んでいる。現プーチン・ロシアにおいて、中道リベラルの政治家はロシア議会に議席をもたず、政治的発言権も持たない。ガイダル、ヤブリンスキー、ハカマダ、ネムツォフが、そうである。中道リベラル政党の「右派勢力同盟」と「ヤブロコ」は、前回の下院選で共闘に踏みきらなかった。結果として、両党とも「5%条項」をクリアしえず、共倒れとなった。

小異を捨てて大同団結をする。これをなしえないのが、知識人の悲しい性(さが)。そのために、しばしば力または妥協が支配する政治の世界からはじき出されてしまう。

ロシア史を貫くこの1本の糸を、本書は、ミリュコフを例にとり、他の万巻の書に増して説得的に描く。ミリュコフは、立憲民主党党首。2月革命でロマノフ王朝が崩壊したあとの臨時政府で外相を務めた。臨時政府の最初の入閣者11人のうち、約10人がミリュコフ麾下(きか)の立憲民主党員であった。それにもかかわらず、学者肌のミリュコフは野心家のケレンスキー法相によって外相辞任へと追い込まれた。挙句(あげく)の果てにはレーニン率いるボリシェビキが10月蜂起に成功したために、外国の亡命先から遠吠えする運命に甘んじた。

本書は、約100年前のロシアで活躍した一文人政治家の生涯を描いた伝記ではある。だが、その今日的な意義と教訓は計り知れない。鈴木氏は、最近利用可能となったミリュコフ文書など万巻の資料を渉猟(しょうりょう)して本書を完成した。地下のミリュコフも莞爾(かんじ)と微笑んでいることだろう。《産経新聞(2007年1月28日)読書欄より》

 

 

 

知られざるロシアの「生ける近現代史」■オーマイニュース(2007年2月9日)BOOKS欄

著者(鈴木肇)は1943年(昭和18年)にロシア語を学び始めた。ツルゲーネフの小説に魅せられ、原文で読めないものかと夢みたからだ。戦時中のことで、学ぶのは容易ではなかった。しかし、どんなことになっても、ロシア語だけは手放すまいと思い定めて、今日まで原文、原書をせっせと読み続けてきた。この間64年。『不滅の敗者ミリュコフ』は、この長い年月に私が学びとってきたことを全て注ぎ込んで、簡潔にまとめたものである。その私が最近知って驚いたことがある。それは「ミリュコフ」が、わが日本ではまったくといっていいほど知られていないことだ。代表的な高校用の世界史教科書を調べても、彼の名は載ってはいなかった。ミリュコフはロシアの最大級の歴史家、大物政治家、外交家であり、帝政を終わらせた2月革命(1917年)の中心人物、ときの臨時政府外相だった。ロシア自由主義運動の総師で、広い華麗な人脈を持つ「生ける近現代史」ともいえる重要人物なのに、である。

私がこの人に関心を持ったのは、1966〜69年に産経新聞モスクワ支局長として、現地からソ連報道に当たっていたときのことだ。日々の生活体験を通じて、ソ連共産党の一党独裁体制の根本的な欠陥を思い知らされた。膨大な軍備、軍拡、自由と人権の抑圧、特権層の横暴と汚職の広がり、物不足、一般大衆の貧しさ…。特に日用品の不足、サービスのなさは、日本の人々には想像もできないほどひどかった。そこで私はこの体制の欠陥を知ろうと、独力でロシア革命史の見直しを始めた。その後1981〜87年に再びモスクワ支局長としてソ連報道に当たり、革命とソ連の体制への理解をさらに深めた。『ソ連共産党』(教育社)から『人物ロシア革命史』(恵雅堂出版)に至る一連の著書を経て、ついに本書を世に問うことになったわけである。

ソ連解体後のロシアでは、多くの禁書が解禁され、刊行されている。私はミリュコフ関連のそうした本を手広く読んで、この「知の巨人」の全体像を描き出そうと努めた。彼の本格的な評伝は、ロシアでも、欧米でも刊行されてはいないようだ。読者には「ミリュコフ」を通じて、ロシア革命史の真実を知ってもらいたい。彼の学ぶ意欲、超多忙なのに多彩な趣味とゆとりを持つ生活、失敗にもめげずにそのつど立ち直る彼のたくましい生き方から、多くのことが学びとれると確信している。

 

 

■著者略歴

鈴木 肇 昭和2年 東京生まれ。

昭和26年 早稲田大学ロシア文学科卒業、産経新聞に入社。外信部でソ連問題を担当(平成2年まで在社)

昭和41〜44年 モスクワ支局長。

昭和56〜62年 ふたたびモスクワ支局長。

昭和63年 論説委員。

平成2〜9年 東京家政学院筑波短期大学国際教養科教授。

平成6〜9年 同 国際教養科長。

平成9〜14年 平成国際大学法学部教授。退職後、名誉教授。

専攻:ロシアの思想と文化、特に自由主義と社会主義の歴史

主な著書に、『ソ連共産党』(教育社)『ソ連反体制知識人』(教育社)『素顔のモスクワ』(日本教文社)『ロシア自由主義』(イセブ)『人物ロシア政治・文化史』(イセブ)『解禁資料の新レーニン伝』(イセブ)『人物ロシア革命史』(恵雅堂出版)など。

 

 

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