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内村剛介ロングインタビュー 生き急ぎ、感じせく―私の二十世紀

¥3,080 税込
商品コード: 978-4-87430-040-4
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著者 内村剛介〔著〕/陶山幾朗〔編〕 体裁 A5判 上製本 412頁 発行 2008年5月25日

 

 

—吉本隆明氏、激賞!「真正面からの問いと、深い共感が導き出した稀有な記録」

 

ソ連が死ぬか、俺が死ぬか。かつてスターリン獄に幽閉されてあったとき、自分一個の実存と全ソ連の存在を等置した青年は、壁の中で一人レーニン全集に読み耽る。

本書は、十一年後帰国した彼が、その後いかにして独立的な思想者、ロシア学者として生成したか、ロシアと日本への深い愛憎の核心を語る。

少年時より渡満し、哈爾濱学院に学び、シベリア抑留を経て戦後日本を生き急ぐ日々の中で、遂にソ連崩壊を見届けるに至る内村剛介の歩んだ軌跡には、二十世紀という時代が負った痛切な軋みが反響している。

 

《日本図書館協会選定図書》

 

カバーデザイン—飯島忠義

 

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◇「内村剛介ロングインタビュー」下記8誌にて書評掲載

 

「週刊文春」 6月5日号 書評欄(鹿島茂氏)

「朝日新聞」 6月5日 文化欄(名古屋版)

「読売新聞」 6月29日 書評欄(田中純氏)

「論座」 8月号 書評欄(白井聡氏)

「諸君!」 8月号 書評欄(三浦小太郎氏)

「東京新聞」 コラム 大波小波

「毎日新聞」 書評欄

「中日新聞」 6月18日 中部の文芸

 

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《本書端書きより》

 

深い共感が導き出した稀有な記録■吉本隆明

この本は陶山幾朗がインタービュアとしてロシア文学者内村剛介に真正面から問いを発して、それにふさわしい真剣な答えを引き出すことに成功している稀有な書だ。周到な準備と確かなロシア学の知識・内村剛介への深い共感とが、おのずから彼の少年期からの自伝とロシア学者としての知識と見識の深い蓄積を導き出していて、わたしなどのような戦中に青少年期を過した者には完璧なものと思えた。わたしのような戦中派の青少年にとって日本国のロシア文学者といえば二葉亭四迷から内村剛介までで象徴するのが常であった。そして実際のロシアに対する知識としてあるのはトルストイ、ドストエフスキイ、ツルゲーネフ、チェホフのような超一流の文学者たちの作品のつまみ喰いと、太平洋戦争の敗北と同時にロシアと満洲国の国境線を突破してきた、ロシア軍の処行のうわさだった。中間にノモンハン事件と呼ばれるロシア軍と日本軍の衝突があったが、敗戦時のロシア軍の処行については、戦後になって木山捷平の作品『大陸の細道』が信ずるに足りるすぐれた実録を芸術化したものと思えた。あとは当時の新聞記事のほか何も伝えられなかったに等しい。

 

太平洋戦争の敗戦とともにロシアの強制収容所について文学者が体験を語っているものは、内村剛介が時として記す文章から推量するほかなかった。わたしはおなじ詩のグループに属していた詩人石原吉郎の重苦しい詩篇をよんでそんなに苦しいのならロシアの強制収容所の実体をはっきり書いてうっぷんをはらせばいいではないかと批判して、その後詩の集りに同席したことがあるが、お互いに一言も口をきかずに会を終えたことがあった。彼にはわたしの批判が浅薄に思えたのだろう。わたしは彼の晩年の二つの詩「北条」「足利」をよんだとき、はじめて石原の胸の内が少しく理解できるかもしれないと感じた。

 

陶山幾朗という無類の、いわば呼吸の出しいれまで合わせてくれるようなインタービュアを得て、この本は出来上っている。少し誇張ととられるかも知れないが、わたしには親鸞と晩年の優れた弟子唯円の共著といっていい記録『歎異抄』を思い浮べた。わたしなどには内村剛介が十一年のロシア強制収容所生活中だけでなく、帰国のあと現在にいたるまでロシア学についての専門的な研鑽を怠っていないことがわかって、たくさんの啓蒙をうけた。どうか健康であってもらいたいものだ。

 

わたしがこの本につけ加えることは何もないに等しいが、この本がふれていないことと言えば、後藤新平満鉄総裁のもとで副総裁であった中村是公は夏目漱石の大学時代の心を許した悪童仲間で、是公から新聞を発行して助けてくれないかといって訪れている。漱石は胃病が思わしくないと断っている。それならただ見て歩くだけでいいから遊びにこいといわれて『満韓ところどころ』の気ままな旅を是公のおぜん立てでたのしんだ。公的な集りには一切かかわらなかったが、南満各地に散らばった悪童仲間に会い、二葉亭の故地も訪れていることがわかる。漱石のこの旅は『趣味の遺伝』に尾をひき、強いて言えば小説『こころ』につながっている。

 

 

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■著者略歴

内村剛介(評論家・ロシア文学者)1920年、栃木県生まれ(本名、内藤操)。

 

1934年、渡満。1943年、満洲国立大学哈爾濱学院を卒業。同年、関東軍に徴用され、敗戦とともにソ連に抑留される。以後、11年間をソ連内の監獄・ラーゲリで過ごし、1956年末、最後の帰還船で帰国する。

帰国後、商社に勤務する傍ら文筆活動を精力的に展開し、わが国の論壇、ロシア文学界に大きな影響を与える。著書に『生き急ぐ—スターリン獄の日本人』、『呪縛の構造』、『わが思念を去らぬもの』、『ソルジェニツィン・ノート』、『流亡と自存』、『信の飢餓』、『失語と断念』、『ロシア無頼』、『わが身を吹き抜けたロシア革命』など多数。また訳書にトロツキー『文学と革命』、『エセーニン詩集』などがある。1973年から78年まで北海道大学教授、1978年から90年まで上智大学教授などを勤める。2009年1月逝去。

 

 

■編者略歴

陶山幾朗 1940年、愛知県生まれ。

1965年、早稲田大学第一文学部を卒業。著書に『シベリアの思想家——内村剛介とソルジェニーツィン』、共著に『越境する視線—とらえ直すアジア・太平洋』など。

現在、雑誌『VAV(ばぶ)』主宰。

 

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